■自己啓発系ジャニヲタ、顔だけのファンを排除していく

 

どうでもいい話で申し訳ないが、ジャニヲタには自己啓発系ヲタが存在する。ファンとしてのありようを厳しく定義し、基準から外れたファンを叱咤激励するのだ。

 

最近あったわかりやすい例だと、Hey! Say! JUMP! 伊野尾慧くんがセクシー女優とシンガポールで密会していた(らしき)写真が報道されたことがある。「髪型は似ているが、この写真の男性は伊野尾くんじゃない。伊野尾くん本人なら首にほくろがあるはずだ!」などと主張するツイートが多くある一方、「これくらいのスキャンダルで担降り(担当を降りる=ファンをやめる)するようなやつは、ただの『顔ファン』だ。消えろ。」と挑発するツイートもたくさんあった。

 

顔ファンという言葉はもともとはビジュアル系バンドファンの間で出てきたもののようだ。ビジュアル系バンドを応援するならば、容姿だけがスキではこまる。アーティストが作詞作曲する楽曲の内容やパーソナリティーも深く調べるべきだというメッセージがこめられている。

 

アイドルなんだから顔がスキなのは当たり前だろとツッコミたくなる。しかし、顔が好みであるだけでは私たちの存在意義はないと、誰に頼まれてもいないのに自己啓発を続けていくジャニヲタたち。2013年ごろには嵐と関ジャニ∞のファンを中心に、ツイッターに「#顔ファン防止運動」が展開された。テレビ番組や雑誌で変顔をしたタレントの画像をツイッターにあげ、「こんなぶさいくな顔をするタレントでも好きでいられるというなら、お前をファンとして認めてやる。」というメッセージが横行した。

 

 

■自己啓発系ジャニヲタ、他メンバーファンも攻撃しはじめる

 

自己啓発系ジャニヲタは、顔ファン以外にも攻撃の幅を広げていく。毎年、春先に関ジャニ∞村上信五くんが「If  or…」という一人舞台を企画している。通常、ジャニーズタレントの舞台チケットはファンクラブ会員限定で抽選で販売される。しかし、村上くんの舞台だけは毎年一般発売だけというのが恒例だ。村上くんファンはチケットをとることに必死となる。すると、なんと同じ関ジャニ∞ファンに攻撃をしかけてくるのだ。

 

「他担のくせに『If  or…』チケットを見に行くのは許せない。舞台を見に行って村上くんに担降りするとかいう人はむかつく。」といったツイートが散見される。「担」は「担当」の略である。通常、女子アイドルのファンは、グループの中で誰を応援するというとき「●●推し」ということが多いが、ジャニヲタは「担当」という。「推し」はピュアに応援しているイメージがあるが、「担当」となると業務として責任を背負っているイメージが追加される気がする。タレントがスキャンダルに晒されようが、主演ドラマの視聴率が悪かろうがピンチに陥ってもタレントを支える、自己啓発系ジャニヲタにピッタリの言葉だ。

 

「他担」は、自分とは違うジャニーズタレントを担当している人のことを指す。「担降り」は、現在のタレント担当を降りることを指す。つまり「他担のくせに『If  or…』チケットを見に行くのは許せない。舞台を見に行って村上くんに担降りするとかいう人はむかつく。」とは、ほかのジャニーズタレントの担当のくせに村上くん一人舞台を見に行って、村上くん担当に異動する人に腹が立つ、という意味だ。自分が推している女の子が総選挙で上位に入ってほしい、推しメンのファンの数が増えてほしいと願うAKBグループの民主主義システムから見たら、かなりおかしい話。極端に言えば、自分が担当するタレントのファンが増えてほしくないというツイートだ。

 

 

■自己啓発系ジャニヲタ、ついに攻撃の矛先がジャニーズタレント本人に向かう!

 

ファンを蹴散らかしてきた自己啓発ジャニヲタは、ついに関ジャニ∞安田章大くんを攻撃した!その事件が起きたのは2016年クリスマスだった。2016年11月から始まった関ジャニ∞コンサートツアーのセットリストに入っていなかった曲をクリスマス、ナゴヤドーム公演の1回だけ披露したのだ。演奏されたのは、当時のコンサートに合わせて発売されたシングル限定版のカップリング曲。メンバーの丸山隆平くんが初めて作詞作曲した「ふわふわポムポム」という作品だ。支離滅裂な一発ギャグを即興でつくることが好きな丸山くんらしい狂気に満ちた歌詞ときゃりーぱみゅぱみゅ風のアレンジ。ツアーが始まる前、ファンはこの曲がどんな振り付け、どんな演出でコンサートで披露されるか楽しみにしていたのだ。

 

しかし、ツアー初日の札幌公演から「ふわポム」は演奏されず多くのファンが残念がるツイートであふれかえった。そこから東京ドーム公演を経て、クリスマスの名古屋で1回だけアンコールで「ふわふわポムポム」が演奏された。会場は大いに沸いたが、安田くんの一言でジャニヲタ・ツイッターが炎上した。安田くんが「あえてセットリストにこの曲は入れてなかったんです。今日来たお客さんは当たりくじだー!」とコンサートで発言したのだ。

 

ここで自己啓発系ジャニヲタが発動する。「他の公演はハズレくじだというのか、ほかの会場でしかコンサートが見られないファンに失礼だ。私は安田の担当を降りる。」

 

 

■なぜ自己啓発系ジャニヲタが誕生するのか?

 

顔だけのファンではない、担当するタレントがどんな窮地に陥っても支える、そんな自己啓発を繰り返してきたファンが、なぜ肝心の担当を降りるのか。なぜ楽しいはずのジャニヲタ生活をつらく厳しいものへ劣化させてしまう人間が現れるのか?その原因の1つは、ジャニーズが知らず知らずに築きあげてきた「ファミリー感」である。

 

HIROさん率いるEXILEグループが自分たちを「EXILE TRIBE」すなわち「種族」と名乗ったのは2010年ごろの「マイルドヤンキー」の空気感にマッチしたコピーだと感心したものだが、ジャニーズはそのずっと前、少なくとも30年前にはファンクラブ組織を「ジャニーズ・ファミリークラブ」と命名していた。SMAP解散の直接的な原因になったといわれる週刊文春での、元SMAPマネージャーとメリー喜多川インタビューでも、メリーさんは「タレントは家族ですよ。マッチの親が亡くなれば葬式に参列したし、子どもが生まれればお祝いします。」と「家族」というキーワードを発言していた。

 

ジャニーズがファンと「家族」になっている。「種族」でも「推し」でもなく家族であるとはどういうことだろうか。家族のなかで子は親を選べない、親に理不尽なことをされても耐えるしかない。一方、子どもがどんな窮地に陥っても守る、子がどんなひどいことをしても受け入れる親の存在も現れる。そしてお母さんとお父さんは血がつながっていないからいつでも別れる危険性がある。

 

ジャニーズにはそんな「家族」の要素が多分に含まれる。同じ人種として堅い絆に結ばれるEXILEグループや、総選挙の投票結果で勢力図の多くが決まる民主主義国家の国民としてつながるAKBグループともちょっと違うのだ。

 

 

■ジャニーさんが紡いできた家族とは何か

 

ジャニーさんはタレントに敬語で話しかけられるのを嫌う。小さな子どもがお父さんに話しかけるように、親しげにため口で話しかけてほしいと強く願っている。事務所の近くの蕎麦屋に若いジュニア数名とジャニーさんが来店したのを目撃した人の話では、ジュニア同士でわいわい会話して楽しく蕎麦を食べ、ジャニーさんは無視されるような時間帯もあり驚いたという。まさに、家族の中でお父さんがうとまれ透明人間扱いされるような立ち位置だ。ジャニーさんはそんなリアルお父さんになることができる。

 

一方、ジャニーさんは残酷な振る舞いもする。ファンの間で人気がありアイドル雑誌の投票で上位になるようなタレントを必ずしも推すとは限らない。夏休みまではお気に入りで舞台で主役をやらせていたジュニアがいても、その子を上回る魅力をもった男の子が入所すると、いきなり主役を変えたり平気でする。家族であっても血がつながっていないジュニアを平気で捨てたり拾ったりするのだ。

 

■ジャニーズ家族の娘たちの残酷なふるまい

 

そんな優しくて怖いお父さんの家族であるジャニヲタも、当然、家族としての振る舞いをする。そのようすが自己啓発系ジャニヲタとして現れる。Hey! Say! JUMP伊野尾くんがセクシー女優と写真を撮られても、そんなことで家族をやめないと宣言してみる。一度家族になると決めた人のもとを離れ、関ジャニ∞村上くんのもとへ家出しようとするオンナをさげすむ。家族の中に不平等をうもうとする関ジャニ∞安田くんを心底ヘイトする。すべてはジャニーズ・ファミリーが生み出した悲劇だ。

 

こんなにネチネチ報告している私も、どっぷり関ジャニ∞ファミリーだ。2017年1月、大阪ドームで行われた関ジャニ∞のコンサート。MCの時間に「錦戸亮くんが楽屋でずっと『笑っていいとも』テーマソングをアコギかき鳴らしてうたっている。」とメンバーに指摘された。本人は、夜遊び仲間がカラオケで必ず『笑っていいとも』テーマソングを歌い次第にその歌の良さに気付いたからだと語った。MCが終わり、バンド演奏コーナーになると錦戸くんが「『笑っていいとも』やってもええかなあ。」といってアコギをかき鳴らし、小さな声でテーマソングを口ずさんだ。大阪ドームは6万人動員した大きな会場でしかも私は2階の上のほうの席に座っていた。関ジャニ∞のメンバーは豆粒にしか見えない状態だった。にもかかわらず、錦戸くんが『笑っていいとも』を口ずさみ始めた瞬間、まるで錦戸くんの家のリビングでその鼻歌を聞いている家族になった錯覚に陥った。自分でも痛すぎると震えたが、巨大な会場なのに家族だと思い込んでしまう空気がそこにはあったのだ。ジャニーズファミリークラブ万歳!

そして、宇多田ヒカルが休業する前に横浜アリーナ―で行ったコンサートでも同じ気持ちになったことを思い出した。