■資本主義とは、おそろしい株主に怯えること

 

資本主義とは何か、語れる知識人が語りだしたらたくさんの問題提起や歴史、経済、哲学を巻き込んだ深遠な話になるに違いない。しかし資本主義とは何かなどと考えることもなく、日々労働に追われている企業の雇用者にとって、資本主義を一言で表せといわれたら「恐ろしい株主がいること!」これに尽きる。

 

株式市場に上場していなかった職場が、ついに上場した!そんな場面に出くわした雇用者に起こる不幸...それは株主総会で「安心してください、成長戦略はありますよ。どうかわが社の株を売り飛ばさないでください。」というためだけに、企業の上層部がひっちゃかめっちゃかと対昨年でプラスになった目標数値をかかげる。

 

上場さえしていなければ、企業は毎年同じ商品を作り、同じだけ買ってもらい、同じだけ利益を出し、何年も同じクオリティーを保っていければいい。長くお客さんに気に入ってもらい、お客さんにとって空気や水のような存在になれればいい。

 

しかし株主がいると、毎年同じ利益を出しているだけでは怒られる。常に利益を増やすために変化しているとふるまわないといけない。株主総会がもりあがらないといけない。組織は、利益を増やすために最適化して成長し続けていくことをアピールしなければいけないのだ。株主総会が近づくと、現場では無意味だと思われるような組織名の変更が行われたり、現場では絶対無理だろうと絶望するような高い目標数値が共有されたりする。

 

 

■株主におびえる上層部をあざ笑うのが、雇用者の楽しみ

 

株主にいい顔したい一心で、粉飾決済とまではいなかくても、なんとか厚化粧をして成長してるふるまいを見せる企業の上層部と、振り回される現場の雇用者。圧倒的に弱い立場に追いやられているように見える雇用者であるが、その立場を楽しもうという態度があらわれる。

 

理不尽に見える組織変更が発表されると、「また株主総会にあわせて、上層部がなにかとち狂ってるぞ。」と鼻で笑う雇用者。土地狂った組織変更であわてふためくはずの雇用者自身が、一つ上のレイヤーにたって上層部をバカにする。月給にもボーナスにも何も変化は起こらないが、上層部が慌てているところを上目線で微笑み返す。この、ねじれた楽しみ方で脳からドーパミンが出るようになると、そのループから抜け出せなくなる。

■会えるアイドルより、資本主義に翻弄されるジャニーズを選びつづける人たち

 

同じようなことがジャニヲタの間でも起こる。ジャニーズはほかのアイドルに比べてコスパが悪い。タレントにあえるコンサートは高い年会費を払ってファンクラブに入っても、人気のあるグループだと抽選で外れて、チケットがとれない。たとえチケットが当たったとしてもそうそういい席がくるはもなく、東京ドームの2階席ではタレントは豆粒にしか見えない。握手会やサイン会など、身近にタレントに触れ合う機会もほとんど作られない。

 

そんなことなら、他の芸能事務所が育てている男性アイドルを応援したほうがよっぽど楽しいはずだ。ちいさなライブハウスで距離が近く、コンサートが終われば直接ファンレターを渡せるかもしれない。

 

それでもジャニヲタをやめない人が多くいるのは、圧倒的な権力をもつ投資家であるジャニーさんをなじってみたいというねじれた欲求が沸き起こるからだ。自ら稼いだお金でたくさんのジャニーズコンサートやミュージカルを見るコアなファンはジャニーさんのことを本名で「ヒロム」と呼び捨てにする。「ヒロムが無茶なステージやるから●●君がかわいそう」などとジャニーさんにダメ出しをする。それが快感なのだ。労働対価を搾取され、高いチケットを一生懸命買い、たった一言ジャニーさんをディスりたい。

 

そんなねじれた人たちに、ジャニーさんの手を離れ、すぐに会える地下アイドルがうずなく投資家なき世界に魅力を感じるのだろうか。